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『組織を変える5つの対話』読んでみての感想

先日『組織を変える5つの対話』のABD読書会に参加してきました。

ABDでさらっと内容を確認しただけでもすごい学びの多い本だったのですが、その後じっくり読み通してみると(幸運にも読書会で一冊いただきました)学びや気づきが色々ありました。

というか、本から得られたものは「色々ありました」なんてレベルじゃなく、読後即座に自分の中に浸透していってしまって、逆にアウトプットが難しい感じだったのですが、このまま何もしないのは勿体なさすぎるので最近放置気味だったこのブログに感想をまとめます。

なぜ組織がうまくいってないのかが分かりやすく説明されている

ウォーターフォールアジャイル」と言う一般的な対比ではなく「ソフトウェア工場とアジャイル」と言う対比が冒頭で提示されているのですが、今多くの組織がうまくいっていない背景には、テイラー主義などが絡んだ歴史的経緯がある、という説明がものすごい分かりやすかったです。

1章に書かれた前置き的な話だとは思うのですが、個人的にはこの背景を知ることができたおかげで以降の章の解像度が上がった感じがします。

90年代、工場での生産活動をうまく回すための科学的管理法オフィス労働にも取り入れるようになったらしく、アジャイルマインドセットに基づいた「開発をうまく回すためのプラクティス」を取り入れても組織がうまく回らないのは、組織自身がまだテイラー主義的なあり方から抜け出せていないからだ、と言うことらしい。

そう言う意味で、アジャイルの対局に位置するのは一つのプラクティスであるウォーターフォールではなく、ソフトウェア工場なのだと。この図式がはっきり示されていることで頭の中がすっきりしました。

ソフトウェア工場から脱却の鍵になるのは人間関係であり、高いパフォーマンスを発揮できる関係性を築くのに欠かせないものとして「5つの対話」が示されると言う流れになっています。このつながりも分かりやすかったです。

Whyやコミットメントについて話そうとしても、信頼関係の構築や不安の克服無しだと効果を発揮できない

本では「信頼を築く対話→不安を乗り越える対話→Whyを作り上げる対話...」と言う流れで対話についての説明がなされていくのですが、「信頼が築かれていないと不安を口に出すことはできないし、チームの不安が解消されてないとWhyについて話し合うことができない」と言う構造が提示されており、すごい頭の中がクリアになりました。

昔、組織を良くしたいという気持ちから誰かが「Whyについて考えよう」と声を上げてくれたりしたことがあったのですが、その時は何かがうまくいかず、表層的な意見がいくつか出てきただけで、あまり良い成果が出ませんでした。

その時私は一参加者としてそこにいたのですが「Whyを意識しようとか、Whyについてみんなで考えようというのは組織改善でよく言われるプラクティスなのに、なんでうまくいかないんだろう」と言う漠然とした疑問だけが残っていました。

この本を読んだ上で思い返すと、おそらく信頼を築くことや不安を乗り越えることが不十分なままWhyについて話してしまったんですね。

「チームを良くするためのプラクティス」自体は様々な手法が世に出ていますが、段階的に示されたものに触れる機会があまりなかったので、5つの対話が示す構造(私自身は下記のような図をイメージしました)は私にとってものすごいありがたいものでした。

「人間関係」「対話」と言うふわっとしがちなものに対して、明瞭な実践方法を提示している

コミュ力」に代表されるように、ソフトスキル系のワードってそれがどういう力なのかの定義や、スキルの身につけ方、身についているかどうかの確認方法がすごい曖昧になりがちですが、この本ではびっくりするほど具体的に定義されてます。

対話の実践方法はプログラムのステップのように表現されていて、 具体的に何をしないといけなくて、どういう結果を得られないといけないのかが明白でした。

今まで読んだソフトスキル系の本の中で、一番エンジニア的なアプローチかもしれない

[対話から学ぶ方法(4R)]

ソフトウェア開発に関係ない職場でも全く問題なく使える

訳者も最後に言及されていましたが、実例としてソフトウェア開発会社の会話が挙げられているだけで、考え方や手法自体はどんな会社でも使えるものだなと感じました。

副題に「アジャイル」とついているけどアジャイルと言う文脈抜きにしても全く問題ない印象で、「社員が受動的で困る」とか「上に指示されたことをこなすだけで楽しくない」とかそういう悩みを抱えているどんな職場にもマッチする気がします。

個人的には、ソフトウェア開発会社以外の会社の人たちに読んでほしいと思いました。私は3年前まで公務員だったのですが、前職時代に読んでみたかったなあ...